世界最古の興行、スペクタクル、闘牛。スペインに渡った92年、新聞やテレビで見る闘牛には歴史に育まれた文化としての闘牛が伝わってこなかった。あくまで闘牛士が主役であり、牛は血を流し死えと追いやられる。
スペインの誇る画家、ゴヤの作品に闘牛術と言う版画集がある。そこには、闘牛が立派な芸術作品になり得ることを証明していた。闘牛と闘牛士が生死を賭けて戦う闘牛をテーマとして制作するのであれば、彼の闘牛術のような普遍性のある作品に仕上げたかった。
また、闘牛場で見る闘牛のイメージは、幼い頃の美術教科書に掲載されていたアルタミラの洞窟壁画のバイソンの勇姿でした。
太古のバイソンは、壁画にじっと収まっている様には見えなかった。今にも壁画から飛び出さんとする躍動感を持っていた。
この印象は、光と影の織り成す生と死のドラマにもう一つのインスピレーションを与えてくれました。
この二つの思いが融合して生まれたのが「色の戯れ」シリーズです。